2012年10月31日

デスオアデッド!


またまたこの日がやって来ました






 今年もまた、この季節がやって来た。この日の為に、昨年から予定を立てていたのだ。早朝に船を出ていつもの場所で過ごし、深夜に戻れば、またあの甘味地獄に遭わずに済むと。それなのに。

「トリック オア トリート」
「…………っ!」
 正面からは二色の純粋無垢な瞳。魔法使いの様な服に身を包み、何かを期待する様に両手を差し出している。背後からは自分と同じ色の嗤った瞳。そのある種の威圧と、束縛の術の効果とで、ルドは身動きを取れずにいた。
「…………ちょっと待っててな、ルディナ?」
 正面の幼い少女を諭す様に声を掛け、ルドは背後の青年を振り向く。
「……バルドル。どうしてもうお前達が居るんだ。出番はまだ先だろう」
「外伝モノは、流れなど気にせずに好き勝手すれば良いと言われたからな。昨年だって、緑虫とか青虫が居ただろう」
 緑虫はグリト、青虫はスイの事を指すのだろう。真顔から発せられるメタ発言に突っ込む気力も無く、ルドはがっくりと項垂れる。
「だからって、始まる前に捕まえなくても良いだろう? たまには休ませてくれ……切実に」
「貴様、俺達の不遇っぷりを知りながらその発言をするのか。こっちは未だに正式な出番が来る気配が無いんだぞ、寧ろ代われよ偽者野郎!!」
「あー、はいはい。もう少し待っていてやってな。何もお前が一番不遇な訳ではないのだから」
 存在すら消えそうな者達も居るのだ、と胸ぐらを掴みそうな勢いで食って掛かる青年を諌め、ルドはだから、と笑みを浮かべる。
「代わってやるから、解放してくれないかな」
 しまった、と言いたげな瞳に、ルドはしたり顔で緩んだ術を無効化させて姿を消した。
「チッ、逃がしたか……どうする」
 と、バルドルはルディナと呼ばれた少女を見る。そこには、足元に散らばるお菓子を嬉しそうに集める姿があった。
「……あいつが置いて行ったのか」
 コクンと頷き、ルディナは幾つかの飴を差し出す。
「…………」
 嫌な予感に、バルドルの顔から血の気が失せる。
「…………生憎だが、人間の食い物は口にしない主義でな」
「言ってた 辛子クッキー 美味しい」
 ずいっと差し出される小さな飴粒。子供の無邪気さに、見事に墓穴を掘ったバルドルは頭を抱えた。この少女には、どうしても邪険な態度を取れないのだ。
(落ち着け俺……そうだ、味など幾らでも誤魔化せる。口の中に放り込み、味を感じる前に消化する事だって俺には出来るだろうああそうだ何を恐れる必要があるソウルアルケミーの力を嘗めるな!!)



「ちゃんと大人しくしていたんだな。偉いぞ」
 居合わせたギルドメンバー曰く、甘味地獄で満身創痍のバルドルに向けられたその満面の笑みは、「みんなにきぼうをあたえるめのひかりだった」そうだ。



おまけ

クルス:あっ……
ルド:んっ?
クルス:やっ、やあやあルドさん。ご機嫌麗しゅう!
ルド:どうしたんだ? あからさますぎる棒読みだが……
   気分でも悪いのか?
クルス:いやー、あっはっは……(去年を思い出すとねぇ……)
ルド:…………?
   そうそう。新しいレシピを試してみたんだ。折角のハロウィンだし、持って行けよ。唐辛子饅頭
クルス:!?
    あーいや、そう言うのは、ルディナたんにあげれば良いんじゃないかな!
ルド:ルディナは辛いもの苦手みたいだし……。
   去年、素敵なブツを頂いてしまったからな♪
クルス:くっ、黒ルドだーーーっ……!!!
ルド:デスオアデッドのこの日……何が何でも生き残る!
   さぁて、次の標的は……ふふふっ
クルス:に……逃げて。皆…………

posted by 頼霧 来須 at 19:41| マイソロ連作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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